帰宅部の櫻井は毎日をそれなりに楽しく過ごしていたものの、無気力に過ごす高校生活にどこか物足りなさを感じていた。そんなある日の放課後、友人がいるはずの部室の扉を開けると、そこにはなぜか着替え中の女子・豊口深空の姿があった。部室を間違えたことに気付いて櫻井はパニック状態。着替えを見られたことに憤る豊口は、女子ラクロス部のマネージャーになることを櫻井に強要する。入部させられた当初は女子部員にこき使われる奴隷生活に辟易としていた櫻井であったが、その心境にも次第に変化が訪れて……。無気力少年が全力少女に感化される爽快スポーツラブコメ。
うーん、なんか苦手な漫画だな。と言っても決して悪い漫画ではない。いや、むしろ出来自体はかなりいい方だと思う。話の構成がしっかりしていてスムーズに読み進められるし、テーマも明確で主人公の変化を通してきっちりやりきっているから読後感もスッキリ。さらにジャンプの新人にしては絵は上手く、少女漫画っぽい複雑に入り組んだコマ割りが状況をよりドラマチックに演出している。技術的には今回の4連続読み切りの中ではこれが頭ひとつふたつは抜けている漫画だと思う。『少年ジャンプNEXT!』で賞を取ったのも納得。
それなのに苦手に感じてしまったのは、俺がジャンプに望んでいるものがこの漫画にはまったくなくて楽しくなかったのと、単純にヒロインが好きになれなかったからだ。ラクロス漫画を期待して読み始めたから、熱いスポーツ漫画でもうんちく豊富で頭脳明晰なマネージャーを描いた漫画でもないことには肩透かしを食らったし、またラブコメ漫画と言えるほどラブなコメディしてるわけではないことにも物足りなく感じてしまった。つまり、本作におけるラクロス部の存在は、あくまでテーマを描くための道具でしかないわけだ。
ではこの漫画はなんなのかと言うと、少女漫画チックな世界で一生懸命になることへの美徳を説いている漫画だ。そのためか、女性上位世界で説教を喰らわされているような被害妄想に陥らないでもない(笑)。俺が期待していた上記のような娯楽性を生む要素が少ない分メッセージ性がよりストレートに伝わる漫画にはなっていて、そのため啓発的な部分だけが濃く残ってしまったように思える。娯楽作品として優れた上で発せられるメッセージはすんなりと受け入れられるが、そうでなければ反発したくなるのが人情というもので、ましてやそれを掲載しているのが少年漫画誌であるならなおさらだ。
続いてヒロインについて。たぶん設定上は不器用だけど心根が美しい頑張り屋さんといった感じなんだとは思うが、俺には自身の身勝手さに無自覚な嫌な女の子に見えてしまった。着替えを見られた割には意外と冷静だからかわいげが無いし、それどころか相手を追いつめて「なんでも言うことを聞く」なんて言質を取る強かさを持っていて怖い。そんな事情で弱みを握ってこき使ったくせに、主人公の本音でもない言葉に傷付いて一方的に裏切られたかのような反応を見せる。ドSな小悪魔系女子とはまた違うし、ただ自己中で酷い子だなぁ、と。結果オーライだからいいって考えは好きじゃない。
失敗を恐れず何かに打ち込むことへの楽しさや美しさを訴えたいなら、ラッキースケベ&奴隷の刑なんて荒技使わない方がよかったんじゃないかな。本来読者サービスやギャグ以外の何物でもないラッキースケベをなまじストーリーの中にガッツリ組み込んでしまっために、ヒロインの人間性についてつい真面目に考えることになってしまったから。そもそもラッキースケベの数々がまかり通るのは、相手が主人公に好意を持っていてその後のやりとりが痴話喧嘩のように見えたり、あるいはそんなことすらも許せてしまうほどに寛容な菩薩のようなヒロインだったりするからで、重罰となるとこれはもうアンラッキースケベと言う他ない(笑)
とある町のそば屋に黒い羽織を纏った眼鏡姿の浪人が現れた。その男・黒月雪路は細身の優男という実に頼りない風貌であったが、実は黒月流柔術師範の肩書きを持つ武術の達人。そば代を賭けた腕相撲で20人抜きを達成して街でちょっとした有名人になっていた頃、新興のヤクザ組織「天竜」とひと悶着を起こす。これを合気の技で華麗に撃退すると、今度は「花岡組」にその腕を買われて用心棒に。こうしてヤクザ組織の抗争に巻き込まれていくのであった……。合気道の達人が無刀の心を説く時代劇バトル漫画。
2011年2号掲載の『サジタリ』以来、およそ1年4カ月ぶりとなる本誌掲載。前作が個人的には非常によく思えた読み切りだったので、今回も期待して読み始めたら……うーん、こうなっちゃったか。全体的に素人臭い粗さや違和感が薄れ、キャラの動かし方、見せ方がよくて格段に読みやすくなっているなど、成長の跡がうかがえたのはいいこと。絵柄だって洗練されてスッキリしたし、前作とどちらがウケそうな漫画かと問えば、大抵の人はこちらだと答えるだろう。
でも、それはあくまで『サジタリ』よりも無難で手堅い漫画になったというだけのことでしかない。だいぶ少年漫画っぽくはなったし、こういうジャンルの漫画もそれなりに描けるんだなーと感心しても、これをバトル漫画として楽しめたかと言えばそれはノーだから。バトル漫画としてはとにかく地味で淡泊で、血や汗の臭いが少しも感じられないのがそう思われる一番の原因だと思う。「無刀の心」は立派だが、そんな手加減して戦うキャラのバトルが面白いかと言うと……。
また時代劇漫画として読むにしても、以前は心理描写が巧みな新人という印象があったのに、本作では捉えどころのない飄々とした謎の優男が主人公であるため、その肝心の心理描写そのものが活かされることがなかったのが残念だった。終盤にちょっとアクションが入るような人情ものの時代劇の定番をやるにも、こんな得体の知れないミステリアスな主人公ではさすがに厳しい。せめて旅の目的や「無刀の心」を信条にするに至ったきっかけなど、主人公に関することが少しでもわからないことにはいつまで経っても親しみが持てないと思う。はたして親しみが持てないキャラで人情ものがやれるだろうか?
それから最後に気になった点が一つ。この作者、背景にはまったく興味が無い人なのかな。時代劇なら雰囲気を出すためには背景が重要になるだろうし、そもそも遠景が全然無いからずっとキャラだけをカメラが追っているものを見せられているような変な窮屈さを感じるのがよくない。で、ちょっと確認してみたところ、街並みがちゃんと見えるのが1コマあるだけで、あとは建物と月が浮かぶ夜空しか描いてないことがわかった。これでは異次元空間の中にいるような感覚に陥らないでもないので、やっぱり時代劇をやるからには時代性を感じる背景が見たいところではある。
以上、不満に感じたことばかり書いてしまったが、技術的にはもう十分な人なので連載する日はそう遠くないんじゃないかとは思う。とりあえず器用そうな人だとは思うから、このまま消えちゃうなんてことはないはず。次回作に期待。
国家最大級の警備システムによって犯罪検挙率99%を誇り、そのことから「絶対治安都市」の異名を持つアストレアシティ。その街の警察署に入署できたことに感慨を覚える新人の霧島カナコであったが、問題児揃いでド底辺の広報課に配属されショックを受ける。その中でもとりわけ目立っていたのが織崎弾丸とバレット=ホークス。だが、その問題児コンビには「二発の弾丸(ダブルバレット)」と呼ばれるもう一つの顔があって……。常識破りのコンビが暴れる痛快ポリスアクション漫画。
2008年の『クロガネ』以来、およそ4年ぶりとなる本誌再登場。当時はハイテンションで破天荒なサムライ漫画を描いていて好感を持ったのは覚えているが、それにしてもこんなにも古臭い漫画を描く人だったっけ? 縦に細長い瞳&一本まつ毛ピーンって絵を見ると懐かしい気分になるな。そして内容の方もまた懐かしい臭いがする漫画だ。と言ってもこれは当時のエッセンスを取り入れた漫画ではなくて、単純にセンスが当時のまま停滞している漫画といった感じ。
ジャンプの読み切りとしては完成度は高い方で、読みやすい漫画になっていて絵も丁寧で見やすい。技術的にはこれといって目立つ問題がないから、知らない人が読めばきっとプロが描いた漫画だと思うことだろう。ただ、それ以外に特筆すべき点が見当たらなくて、率直に言えば「アシ歴が長い人が描いた教科書的で古臭い漫画」というのが正直な感想。実際にアシ歴が長いかどうかまでは知らないが、こうまで古臭い漫画だとさすがに20代ってことはないんじゃないの。1990年前後の漫画って感じだから。
本作の一番の欠点はキャラの個性が弱いことだろうな。一方は好き勝手セクハラする軟派野郎で、もう一方は所かまわず銃をぶっ放す堅物ゴリラ。ただそれだけでは個性的だとは思えないし、何より超・問題児コンビといえるほどのインパクトが無いのがダメだと思う。そこに問題児キャラとしての面白さがないからね。この人たち1%の人間じゃなくて10%くらいの人間なんじゃないの、ってつい思ってしまうくらい平凡な問題児っぷりだ。型破りな人間の設定なのにベタな漫画のキャラの型にはすっぽりハマってるよ。
バレットの方はまだ発砲バカというキャラ付けがアクションシーンでも生きているからいいとしても、織崎弾丸の方についてはセクハラ以外の印象がまったくないが、このキャラの特徴っていったいなんなんだろうか。運転技術が地味にすごいという点だけ? そもそもの話、二人ともいかにも少年漫画的なキャラ造形なのにも関わらず、実は漫画的な特殊能力が一切無いというのはちょっと詐欺だと思う(笑)。そのためにそれほど凄腕には見えないし、見事な連携プレーでどうこうってわけでもないからバディものしてもイマイチになっているような。
偉大な発明家の孫娘・松中スピカは恋心をエネルギーとして発明を産みだし、その発明品で様々な困難を解決する天才少女。憧れの明星先輩が所属するバスケ部が廃部の危機にあることを知り、先輩のことを想うあまり我が身のことのように苦悶するスピカ。その瞬間、スピカの体はまばゆい輝きを放ち、美少女然とした容姿がたちどころにエジソンそのものへと変化した。こうして「発明モード」に突入したスピカは、バスケ部を救う発明品の制作に取り掛かるのであった……。『メルヘン王子グリム』の渡邉築が描く発明パニックギャグ漫画。
この作者は頭がおかしい美少女描かせたら本当に面白いな。読んだ印象としてはとにかく顔芸がやたら多い漫画で、「この顔で閃かなきゃサギ」の発明モードなどの別人顔で笑い、大好きな先輩のためにクレイジーな勢いで盛り上がる天然の変態性に萌える。視覚的に笑えるギャグばかりだから眺めているだけでも楽しめる漫画だ。恋心がダメな方へダメな方へと暴走し、ゴリラ顔の男子や黒人の姿に変装した状態で怒涛のように押し寄せる恋する乙女描写の気持ち悪さったら最高だね。オチのシュートには思わず笑ってしまったが、こういうギャグやるとどっかの人権団体からクレームとか来ないのかね。
ところで、この人の描く女の子が個人的にはすごくツボだ。どのくらい好きかというと、誇張抜きで今ジャンプでやっているどの漫画のヒロインよりもかわいいと思ったほど。ハッキリ言って絵は下手だし、絵柄だって野暮ったくて古臭く、イラスト1枚で魅了できるような力はない。ところがこれが漫画の中だとものすごく魅力的に見えてくるのは、躊躇なく顔面崩壊させてしまうほどに表情が豊かで、一途な恋愛&変態ネタのラッシュによって生き生きとして見えるからなんだろうか。たとえば冒頭の鉄柵に顔がめり込んでいる様子なんてすごくかわいい。なにげにこの状態を5ページも維持しててすごいぞ(笑)
『メルヘン王子グリム』の読み切り以降ずっと期待し続けている作家なので、早く連載で成功してほしいもんだがどうだろうなぁ。ジャンプのギャグ漫画家不足は相変わらずだから、渡邉築は本作、あるいは別の作品で近いうちに連載を持つことになるのは間違いないはず。でも、その『グリム』がたったの2巻で打ち切られてしまったわけで、俺が思っている以上にウケない作風なんだろうか。変態でストーカーっぽいとはいえ、一応美少女が主人公である本作の方が『グリム』よりは成功の可能性があるか?
1話観た時は「こりゃまた酷いの始まったなー」と思ったはずなのに、いつしか毎週楽しみに観るようになっていたバイオレンスギャグアニメ。2話3話となんとなく観ていくうちにいつしか大ハマリ状態になっていて自分でもビックリだ。煽って煽って煽りまくってはいつも痛い目に遭うウザバカ女子高生のやすなと、クールを装っているのに実は沸点が低い殺し屋ソーニャのやりとりがとても微笑ましい。俺みたいに心が汚れている人間からすると、なんの衝突もないヌルい友達関係にはどこか胡散臭さを感じてしまうが、こういう悪意丸出しの凸凹コンビだと本当に仲良さそうに見えて素直に楽しめるな。
このぐらいの頭身が低いキャラがチョロチョロ動いている様子を見ているだけでも楽しいし、ネタもハードなドツキ漫才をやっていて、平和な萌え漫画全盛の今の時代だと異質に感じられて新鮮。まんがタイムきらら系の漫画でもこういうのあるんだな。あと時々出てきては忍法という名の怪現象を披露するあぎりも見てて飽きないキャラで最高。登場人物が少ないだけにワンパターンな笑いになりがちなのが欠点のアニメではあるものの、あぎりがいる時ばかりはマジック(?)を扱ったトリオ漫才に変化。ただの雑談で終わらせなくて、ちゃんと漫才なりコントなりの「お笑い」の形にして、ちゃんとオチをつけてくれるのがいいんだよね。
それにしてもまぁ、こういうギャグアニメって本当に流行らないな。自分が今期観てたアニメの中では一番面白かったのに、世間ではまったく話題になっていないというのはやはり寂しく感じるし、ソフトの売り上げだけ見た人に「爆死アニメ=糞アニメ」だと思われるのは悲しいものがある。でもまぁ、今また第1話を見直してもたぶんあまり面白いとは感じないだろうし仕方ないか。今でこそ絶賛している俺ですら第1話の印象は最悪だったからね。『日常』や『みつどもえ』を観てた時も思ったが、ギャグアニメってスタートダッシュで失敗しちゃうと他ジャンルのものよりも視聴者離れが激しいんじゃないだろうか。
映像は良くも悪くもシンプルで、深夜アニメというよりはNHKのショートアニメに近い印象を受けるし、ネームドキャラがたったの3人と少ないからどうしてもパターン化したギャグばかりになってしまう。絵が安定しているだけの低予算アニメだと思って視聴をやめてしまった人は少なくないんじゃないか。たぶん本作を観ていない多くの人にとって、『キルミーベイベー』はOPとEDが奇抜なだけの萌えアニメのなりそこないって認識なんだろうな。尻上がりに面白くなっていくアニメなのにもったいない。




